【生後10ヶ月頃〜】いたずらじゃないよ、知性の扉を開けているんだ。
「開ける・閉める」のお仕事
なぜ、赤ちゃんは「開けたがる」の?
この時期の赤ちゃんは、「隠されているものを見たい(対象の永続性)」という強い知的欲求と、「自分の手で世界を変化させたい(自己効力感)」という運動欲求が高まっています。
「閉まっている状態」から「開いている状態」へ変化させる行為は、この両方の欲求を同時に満たしてくれる、最高にエキサイティングな実験なのです。
このお仕事の「狙い」:ただの開け閉めではありません
大人が何気なく行っている「開閉」の動作ですが、実は高度な技術の集合体です。
- 手首のひねり(回転):
ドアノブを回す、ビンの蓋を開けるといった、将来の日常生活動作(ADL)の基礎となる重要な動きです。 - 指先の力のコントロール:
「つまむ力」と「引っ張る力」の絶妙なバランスが必要です。強すぎても弱すぎても開きません。 - 両手の協応(きょうおう):
「片手で容器を押さえ、もう片方の手で蓋を開ける」という、左右の手の役割分担を学びます。
ステップ別・おすすめの道具(身近なものでOK!)
Step 1:入門編「パカッ」と開く(片手操作)
- おしりふきの蓋(ビタットなど):
爪を引っ掛けて「パカッ」と開く感触と音がやみつきになります。 - ウェットティッシュのケース:
ボタンを押すと開くタイプも、因果関係(押すと→開く)を学ぶ良い教材です。
Step 2:発展編「持ち上げる」「引きはがす」(両手操作)
- タッパー(保存容器):
最初は柔らかい素材で、密閉性が低く、軽い力で開けられるものから。四隅のタブを持ち上げる動作は、指先の力を鍛えます。 - 小さめの缶(お茶の缶など):
かぶせるタイプの蓋。「まっすぐ上に引き上げる」力加減が必要です。
Step 3:応用編「ひねる」「引く」(複雑な操作)
- 巾着袋の紐:
両手で紐を持ち、左右に引っ張って開ける。「引く方向」の理解が必要です。 - 大きめのファスナー(チャック):
ポーチやカバンについているもの。つまみを親指と人差し指でしっかり持ち、一直線に動かす集中力が必要です。
リカバリープランとネクストステップ
うまくいかない時は(リカバリープラン)
固くて開かない・怒り出す
原因:新品のタッパーなどは大人でも固いことがあります。
対策:渡す前に大人が何度か開閉して緩くしておきましょう。また、「半開き」の状態(少し浮かせた状態)で渡し、「最後のひと押し」だけを成功させてあげるのも良い方法です。
開けるだけで、閉めようとしない
原因:「閉める」動作は「開ける」よりもはるかに難しく、位置合わせ(定位)の能力が必要です。
対策:無理にやらせなくて大丈夫です。「開ける担当」が赤ちゃん、「閉める担当」が大人で楽しみましょう。1歳半〜2歳頃になると、急に「きっちり閉めたい(秩序の敏感期)」時期がやってきます。
指を挟んでしまう
原因:力加減や、危険予測がまだできません。
対策:バネの強い缶や、重い蓋は避けましょう。最初は怪我のしにくい「布製の巾着袋」や「マジックテープ式の財布」などが安全です。
上手にできるようになったら(ネクストステップ)
「パカッ」と開ける動作をマスターしたら、より複雑な手首の動きへ進みます。
「回して」開ける(ねじる・回転):
ジャムの空き瓶や、クリームの容器など「スクリューキャップ(ねじ式の蓋)」に挑戦します。
「左に回すと開き、右に回すと閉まる」という法則性と、手首をひねる高度な運動能力を養います。
道具を使って開ける:
大きな洗濯バサミ(指の力で開く)や、トングなど、「道具を介して物を操作する」ことへ発展させます。
身支度への応用(ボタン・スナップ):
最終的なゴールは「自分の服のボタンをかける/外す」ことです。ファスナーや大きなスナップボタンのついた服やカバンで、着脱の練習(お着替え)へとつなげていきましょう。
家中の蓋という蓋が開けられる時期は、確かに大変です。
室内の安全を確保した上で、小さな探究者が「自分の手で世界を切り拓く方法」を学んでいる様子を見守ってあげましょう。